演劇の力~自分たちにできること~

 先日、仙台にて『Hospital Of Miracle』(主催:滋慶学園COMグループ)というミュージカルを観劇しました。これは「骨髄移植推進キャンペーン・東日本大震災復興支援ミュージカル」と銘打って、専門学校の学生たちが中心となって企画・公演を行ったものでした。もともとは骨髄バンクの窮状を知った大阪の専門学校の学生たちが、「私たちにできることは何か?」を考え、1994年に骨髄移植推進キャンペーンミュージカル『明日への扉』を初演し、そこから全国に広がり『Hospital Of Miracle』というオリジナルミュージカルが誕生しとのことです。仙台では昨年に引き続き、2回目の上演となりました。

 勤務校の卒業生(演劇部ではない)が出演するということもあり、また高校生は入場無料、さらには福島から仙台までバスまで出していただけることとなり、部員を引き連れて観劇しました。地区コンクール前の大事な時期ではありましたが、部員たちに高校演劇ではない「生の舞台」を見てほしい、またそれが自分たちの舞台に必ず生きると思って、思い切って土曜日の午後の練習を「ミュージカル鑑賞ツアー」としました。

 結果としては、自分の予想はいい意味で裏切られました。想像以上の熱演の舞台に部員たちは感動の涙を流しておりました。もちろん、私も感動しました。学生たちの一生懸命な演技や歌、ダンスはどれも観客を魅了し、最後のカーテンコールの拍手は鳴りやみませんでした。いやあ、本当のいいものを見させていただきました。コンクールの練習をする以上の価値があったと思います。滋慶学園の学生の皆さん、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。

 なお、このミュージカルは「財団法人夏目雅子ひまわり基金」の後援と、「田中好子“いつもいっしょだよ”基金」の応援を受けています。生徒が「夏目雅子って誰?」と言っていましたが、さもあらん。女優・夏目雅子さんが急性骨髄性白血病で亡くなったのは1985年のこと。今の高校1年生は2000年生まれですから。何と、ミレニアムじゃないですか!?(もはや死語ですね。)「堺正章さんと『西遊記』に出てたんだよ。」と言っても通じません。さらに「キャンディーズ」なんて持ち出してもねぇ。「お父さんお母さんに聞いてごらん。」と言って終わることにしました。(でも最近の保護者は自分より年下の方が増えてきましたが…。)なお、若い読者の方に申しますと、田中好子さんは70年代に活躍した女性歌手3人組の「キャンディーズ」というグループのお一人でした。さらに追記しますと、田中好子さんの旦那様は夏目雅子さんの実兄でもあります。

 

ところで余談ですが、この公演を見て「骨髄バンク」について非常に関心が高まりました。「誰かのために」という意識は常に持ってはいるのですが、なかなか行動につながりません。そりゃあ、「自分たちの演劇を通して、見てくれるお客さんに元気をあげたい!」なんて言えばカッコイイものですが、ちょっとおこがましくも思います。でもこの公演を見て演劇の持つ力って本当にすごいなとも感じました。先の大阪の学生たちではないですが、「自分たちにできること」って何だろう、とつくづく思います。『塩狩峠』の永野信夫とまではいかなくても、何かできないかなと考えてしまいます。改めて「自分という存在」、そして「生かされている命」というものに思いを寄せ、仙台からの帰りのバスの中でいろいろなことを考えたものでした。(O